マミジロ(眉白)に初めて出会ったのは今から30年以上も前のことだ。
当時はまだ野鳥撮影にも登山にも縁がなく、もっぱら釣りに興じていた。
自宅から車で5分ほどのところにイワナや時にはアマゴが釣れる渓流がいくつかあって、陽の長い季節なら仕事が終わってからでも十分釣りになった。
それでも釣りを始めた20代後半から30代前半にかけての頃に比べると釣り人も多くなり、徐々に釣れる魚の平均サイズも小さくなっていったように記憶している。
そんな時、知人に雨後や夕立の後良型が釣れると教えられたポイントで尺前後かと思われるイワナが入れ食いになったことから、しばらく通い詰めた谷があった。
そこは入渓点まで20分ほど急な斜面を谷底まで降らなくてはいけないような場所で、夕方釣り始めてイブニングライズまで釣ると帰りは真っ暗になってしまうほどの深い谷だった。
その日も釣りを終えて、薄暗くなった流れを慎重に降って入渓点近くに掛かる小さな橋のあたりまで来た時、半ばシルエットになった中型の鳥の影が対岸の岩の上にあった。
それがマミジロだった。
普段その辺りで出会う野鳥といえば、同程度の大きさ的にはカワガラスぐらいで同じツグミの仲間のアカハラなどはまず水辺で見かけることはない。
でもこの時は初見にも関わらず、瞬間的にマミジロだと確信した。
今でもよく覚えているのは、夕闇が漂う谷底の微かな明るさの中で、真っ黒な全身が鈍い緑青色に輝いて見えたこと。
識別の根拠になったのは無論夕闇の中でもよく目立つ白い眉班だったはずだが、この体色がなぜか印象に残っている。
その後釣りからも遠ざかり、登山に趣味が変わってからもこの鳥に出会うことはないまま30年以上が過ぎた。
そして今回の予期せぬ出会いへと繋がる。
きっかけはコマドリである。
今期は数回出かけても空振りが続き、囀りのシーズンも終わりに近づいたこともあって最後の望みを託すつもりで人気の探鳥地に向かったのだが、結局遭遇はできなかった。
それでも何か手応えが欲しくて、唯一出てきたミソサザイなどを被写体にして何人かのCMたちと時間を潰しながら待っていると、CMの間から「マミジロが出ている」との声が聞こえてきた。
そうなればコマドリどころではない。
こちらの方がはるかに貴重な鳥なのである。
幸い件のマミジロは周囲を取り巻く(無論10mぐらいの距離は空ける配慮はしている)CMには目もくれず、盛んに苔むした水湿な斜面の落ち葉などをひっくり返して採餌に集中している。
こうなるとマミジロフィーバーである。
動画も含めかなりの枚数を撮影することができた。
惜しむらくはCMが集中する有名な探鳥地ならではの人の多さと、背景が斜面なので抜けた写真が撮れなかったことぐらいで、まずこれだけの時間撮らせてくれたマミジロに感謝するほかないだろう。
それにしても30数年前のあの夕暮れの谷で、たった一人で遭遇したマミジロの微かに発光するかのような姿はいまだに忘れることはできない貴重な思い出の一つである。

マミジロと再会。少し離れた倒木から現れた。この辺に留まってくれたらよかったけれど。

徐々に近づいてくる。50%にトリミング。

精悍な姿。背景が土の斜面だと保護色になることがわかる。50%にトリミング。

陽が差してきた。背面が見える。風切り羽根は黒というよりコーヒーブラウン。50%にトリミング。

正面から。こちらを気にしてはいるが、物怖じしない。50%にトリミング。

背景の綺麗なところに出てきてくれた。

そのクローズアップ。精悍な顔立ちである。30年前、この肩から胸にかけての鱗状の羽毛が緑青色に輝いていたのが印象的だった。30%にトリミング。

眉班のせいかクロツグミよりもシャープな印象。50%にトリミング。

盛んに落ち葉の堆積をひっくり返して餌を探していた。50%にトリミング。

何かを夢見る目つきである。50%にトリミング。
