某日。初めてヒレンジャクに遭遇しました。
いわゆるライファーですね。
もうその日は感激で、コミミズク以来の幸福感に終日満たされました。
二週間ほど前にフクジュソウと節分草を目当てに出かけたのですが、雪の中に福寿草が二、三輪ぽつりと咲いていただけ。
なのでそろそろいいかなと出かけたのですが、途中の探鳥地でウロウロしていると曇り空から雪が舞って来ました。
午後からは晴れ予報だったのですが、それから自生地に向かっても春らしい画が取れないと判断。
仕方なくいつもの探鳥地で水鳥の状況でも確認するか、ということにしました。
いざ探鳥地に着いてみるとここもどんよりと曇り空。
おまけに結構な風もあって気分もクラウディ。
気乗りしないまま幾つかのスポットを回っても大した成果もないので、比較的手堅く鳥の見れる場所へと向かいました。
カルガモやジョウビタキに適当に遊んでもらいながら遊歩道を進むと何やら前方に人だかりが...。
三脚や一脚を据えてしきりに目の前のケヤキを見上げています。
慌てて視線を追うとケヤキの枝にびっしりと止まる鳥のシルエットが確認できました。
その大きさで瞬時にレンジャクと判断。
こうなるとすでに理性は崩壊しているので、遠慮もためらいもどこ吹く風、何食わぬ顔で背後から忍び寄り、望遠レンズの砲列にするりと加わりました。
何しろ見るのも撮るのも初めてとあって、まずは飛び去る前に証拠だけは残さなければなりません。
他のバーダーの邪魔にならないことだけに注意を払いながら、見えている個体めがけて手当たり次第にシャッターを押しまくりました。
一応静音連写にはしてあるのですが、レフ機ゆえの派手なシャッター音だけが異様に響く静寂のなか、とりあえず証拠だけは抑えることができました。
落ち着いて見ると被写体は全てヒレンジャクのようです。
30〜40羽ぐらいの群れがしきりにホザキヤドリギの実を啄んでは、下を人や車が通る度に一斉に少し離れたヤナギの木に避難。
ほとぼりが冷めると再びケヤキにやって来るサイクルが繰り返されました。
ケヤキからヤナギに移動している間は撮影にはならないので、しばし休憩。
周囲のバーダーを見る余裕も生まれます。
ほとんどは高齢者、その服装や様子からみると地元の愛好家グループのようで、どうやら2派に分かれているようでした。
時折新参者に向ける視線も決して好意的とはいえませんが、さりとて文句をつける筋合いもないので無視を決め込んでいるといったところなんでしょう。
こちらもあえてコミュニケーションを取る気にもなれず、もう一人所在無げに地元勢から距離を置いている青年とお互いの顔を見交わしながら何となく間をもたせます。
ヒレンジャクもヤドリギの実があるうちは何度でもやって来るので、後半は少し落ち着いて構図などにも気を使いながら撮影。初見にも関わらずまずまずの枚数を確保でき、地元バーダーの視線も気になり始めたので、近くの歩道整備の工事車両がやってきて鳥たちが再び移動したのを切りに一旦その場を離れました。
いつものウォーキングコースを回って珍しくダイサギの飛翔を撮ったりしながら時間を潰し、曇り空からようやく日の差し込んだのを見て再びレンジャクのいる場所へと戻りました。
光量が増したので少しは解像感が上がるかなと期待したのですが、ケヤキの混みいった枝やホザキヤドリギの枝が被るとかえって影が強く出過ぎていい画になりません。
しばらく粘ってみましたが、埒があかないので諦めて退散することにしました。
やはり鳥は明るい曇天が一番です。
くだんのヒレンジャク。止まりものとはいえ、とにかくせわしなく動き回るので構図を決めるのは運任せがほとんどでしたが、撮影中にモニターで確認したところでは、手持ちの割には程よくピントも合ってまずまずの解像。
先日行った自作のAFテストチャートでのマイクロアジャストメント調整の成果が出て何よりでした。
もし次の機会があれば、今度はもう少し近距離から狙ってみたいものです。(欲は果てしなく...)
画像は全て60%トリミング。RAW現像済み。
使用機材:Canon EOS 7D Mark II + Canon EF500mm F4L IS USM
何枚か証拠写真を撮った後、多少余裕が出てきた頃に撮ったもの。
残り少なくなったヤドリギの実を咥えるところを連写で。
7DmarkⅡの場合、静音連続撮影だと最高で秒間4コマですが、何とかこのくらいには撮れます。
シダレヤナギの枝に止まるヒレンジャクたち。実際にはこの3倍以上群がっていました。まさに連雀の名の由来が実感できます。
今回のベストショットかな。それにしても大きさといい、姿形と言い、配色と言い、羽毛の質感といい、本当に美しい鳥ですね。品格さえ感じます。
どの方向から眺めても画になります。
野鳥の美しさには様々な基準があると思いますが、このレンジャクを始め、イカルやシメ、カケス、オナガなど羽毛のキメが細かくビロードのような質感を持った鳥は他の部分の配色やコントラストと相まって独特の魅力があります。その分羽毛解像が難しいのもカメラマン泣かせですが。
羽ばたきながら採餌。羽根裏は地味。お腹の黄色が目立ちます。
全てに美しい鳥ですが、翼上面の色彩はもとより、特徴的な冠羽と太く黒い眼過線のアイシャドーが葡萄色の体色と素晴らしいコントラストを生み、顔まわりと尾羽の付け根のくすんだオレンジのスポットが抑制されたアクセントを形作っています。そしてアイシャドーに隈取られた虹彩はワインレッド。なかなか見る機会がないのが残念です。