8月の初旬、「山旅会」の皆様と上高地から徳本峠を越えて島々まで歩いてきました。 「ウェストンを旅する」のシリーズも今回で3回目。いよいよ「徳本峠越え」の段階を迎えました。 といっても今回はウェストンとは逆のルートを辿り、上高地からの入山です。 不順な天候を心配しながら帝国ホテル前でバスを降りると、そこには真夏の山岳観光地が抜け上がる青空のもとに展開していました。さすが人が多いです。
これを見なきゃ始まらないということでまずは「ウェストンレリーフ」へ。 必死に由来など話すガイドをよそに皆さん馬耳東風、のれんに腕押し、柳に風。 めげずにぶらぶらと花など見ながらパートナーの「嘉門次」さんの小屋前を通過し、明神橋を渡れば、徳本峠の入り口も間もなく。喧噪とはお別れです。
「午後から雷雨」の予報におびえながら、ひたすら峠の小屋を目指します。 それにしても「山旅会」の面々は山にも花にも詳しい方が多いですね。ガイドもたじたじ、いきおい口数も少なくなります。
無事小屋着。 とうとう雷雨はありませんでした。 降るか降らないかの掛けにも負け、山座同定にも失敗し、いいとこ無しのガイドは一人夕空を見つめるのみです。 雲が奇麗だな。
翌日も晴天。暑さを予感させます。 下見では豪雨の中必死で駆け下りた峠路も今回は古道の風情を楽しむ余裕もあります。 百年前から変わらないであろう道形と傍らに立ち並ぶ大樹がかつてここを行き交ったいにしえの旅人達を偲ばせてくれました。 そして今日私達もまぎれも無くその旅人の一人となったわけです。 「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」(?)。
沢筋に降り立つと6月の豪雨の爪痕が目立ち始めます。 それでも山慣れた皆さんは崩壊地のトラバースや飛び石伝いの徒渉を難なくこなし、途切れ途切れに残る古道歩きを楽しんでいるご様子。 猛暑の下界からは想像もできない快適な沢沿いのトレッキングは何にも増しての贅沢ですね。
岩魚留小屋の河原で昼食を取った時不思議なことが起こりました。 お客様の声に見上げると秋でもないのに落ち葉が空を埋め尽くすように舞っています。 桂の葉です。 岩魚留小屋脇の大桂が私達に挨拶したかのようです。 一瞬かつてこの路を辿り、この木を懐かしんだという光太郎と智恵子の想いが空をよぎったような気がしたのは私だけだったでしょうか。
それからも崩壊地や今にも落ちそうな老朽化した木橋を難なく渡り、古い石垣や炭焼き窯跡の残る古道を懐かしみながら、炎暑の林道を2時間歩いて辿りついた島々宿はさらに酷暑のただ中でした。
明神橋を渡れば徳本峠の入り口も近い。
峠から。東には積乱雲。
北西には穂高。
テント泊が恋しい。マイテントと同じモデル。
徳本峠小屋の夕食です。
峠の朝。
古道を下る。
沢沿いを行く。
フシグロセンノウも夏に輝きます。
徒渉を終え、小休止。
今回の秘密兵器。
岩魚留橋。奥には小屋の屋根が見える。
強者どもが夢の跡。
マンネングサ(?)とコミヤマカタバミのハート型の葉。
桟道を行く。
緑の谷。
川はどこまでも流れゆく。