今月中旬に雨の合間を縫って再び奥多摩を訪れました。 今回も5月に長沢背稜をご案内させていただいたお客様と同行です。
登山口は前回同様「東日原」。 まだひと月しか経っていないのに懐かしさすら感じます。 ひと月前は新緑だった周囲の山々もすっかり緑の装いを濃くして、落ち着いた雰囲気に変わっていました。 汗だくで下った新緑の稲村尾根が思い出されます。
ヨコスズ尾根も緑が増して、前回はようやく芽吹き始めたといった段階だったブナも今は旺盛に葉を茂らしています。それにしてもこの稜線のブナやナラは見事ですね。決して地味豊とは言えないやせ尾根にでんと腰を据えている巨樹の姿には畏敬すら感じます。 今宵の宿りは「一杯水避難小屋」。貸し切りでした。
見事なブナを見上げる。
一杯水避難小屋の前で。
翌日も時折ガスが掛かる曇天でしたが、いよいよ未知のコースに分け入ります。今回は「蕎麦粒山」、「日向沢ノ峰」、「棒ノ嶺」と東に縦走して行く計画です。 それにしても今回も前半部は素晴らしい登山道です。奥多摩の山々は東京都の水源として手厚く守られているせいか、水源林の管理道としての整備が入っているのでしょうか。 でもそれも「日向沢ノ峰」まで。ここからが今回の核心、「長尾丸山」を中間点とする県境尾根の縦走となります。
仙元峠にて。
最初の洗礼は日向沢ノ峰からの急降下。この下りは地形図を見てもあまりイメージできません。 それからもアップダウンの繰り返しで徐々に高度を落としますが、ガスで展望の利かない山稜は長尾丸山までがやけに長く感じました。やれやれ…。 その後「棒ノ嶺」までは間伐作業のチェーンソーの音を道連れにのんびりと下りました。
さすが人気の「棒ノ嶺」山頂には数グループの登山者がくつろぎ、時折日の差す明るさの中、皆さん昼食タイム。 広い山頂からは名栗湖方面の展望が開けるところですが、この日は生憎雲に閉ざされていました。
ここからは下山口の「奥茶屋」目指して急降下です。 暗い杉の林間登山道には「マムシ注意」の看板など置かれていて、何やら険悪です。杉林を過ぎて細流沿いのワサビ田が現れて来る辺りも細い山道には所々草がかぶさり、蛇嫌いには増々険悪です。
杉林の中のガクウツギ。
ウリノキの花も咲いていた。
下山口の奥茶屋からは車道を下り、左右に人家の庭など眺めながら川井駅に到着。今回の山旅を無事終えることが出来ました。
何とか持ってくれた天気にも助けられた今回の縦走、又してもその名の通り奥多摩の奥深さに触れた山旅となりました。 そして何より、展望の利かない尾根道で聞いたお客様の奥多摩の想い出、花の少ない登山道を彩っていたサラサドウダンやホウの花。日向沢ノ峰で出会ったテンの驚いたような顔など、またひとつ「山想記」の貴重なページを増やすことが出来た印象深い山旅でもありました。