連休明けの週末からお客様をご案内して奥多摩の山々の春を満喫してきました。 今回は東日原を起点として前半は長沢背稜経由の雲取山、後半は石尾根の稜線歩きの後、稲村尾根を下って起点へと戻るコース。中々歩き甲斐のある山旅となりました。 緑滴る登山口の東日原からはすぐにヨコスズ尾根の急登にかかります。杉林を抜けるとブナやナラの芽吹き始めた気持ちのいい稜線歩きとなり、一杯水の避難小屋を過ぎれば山腹にほぼ水平に付けられた巻き道を辿って酉谷の避難小屋までののんびりコース。避難小屋には3名の先客がすでにシュラフを広げて陣取っていました。初日のディナーメニューはレトルトカレー。さとうのご飯と中村屋のインドカレーシリーズに福神付けとラッキョウが添えられた本格派です。同宿者の中には一ヶ月以上奥多摩周辺の山塊を歩き回っている強者もいて、この避難小屋もほとんどマイホーム化しているといった風情でした。一日一食、体脂肪率20%以下のスリムな体で26Kgを背負って歩くというまるで苦行僧。 この日は暫しの談笑の後、好天を証しする夕焼けの空を眺めながら早々に就寝と致しました。
春は静かに浸透する。
翌日は好天の中を出発。酉谷山を皮切りに水松山(アララギ山)までは快適な水平道を辿り、長沢山から芋ノ木ドッケの結構手強いアップダウンを越えて大ダワへ。ここまでくれば雲取山は眼前に迫ります。まだ目立った花とてないこの時期の奥多摩の稜線ですが、唯一長沢山手前に咲き乱れるバイカオウレンが林床を華麗に彩っていたのが印象的でした。
長沢山山頂。
谷を隔てて石尾根が連なる。
雲取ももう間近。
奥秩父に日が落ちる。
最終日は早朝に雲取山荘を出発して石尾根へと向かいました。 山荘上には明治期からパートナーの木暮理太郎と共に奥秩父のパイオニア的な登山を行なった田部重治のレリーフが建てられており、ちょっと寄り道してゆきます。 朝の内は空気も澄んで、雲取山頂からは素晴らしい大展望が広がっていました。中でも雪に覆われた赤石山脈と富士の優美な姿が白眉です。 七ツ石山からは石尾根縦走路に分岐し、巻き道を避け、あまり人の通らない尾根道を忠実に辿りました。高丸山や日影名栗などの山頂からも負けじと素晴らしい展望が得られます。特に三頭山や御前山、大岳や御岳の奥多摩を代表する山々とその奥に展望する丹沢山塊の山ひだを手に取るように見ることが出来ました。 今回の山行で何よりも印象的だったのは山麓から稜線の高みへと奇麗なグラデーションを描いて移り変わる春の山肌の色合いです。 まさにエメラルドグリーンの新緑が山麓を彩り、それが淡いブルーグレーのパステルトーンに溶け込んで、ブナやナラの芽吹きのくすんだレンガ色へ、最後に紫灰色の木肌色へと移り変わる様は広葉樹林主体の山地帯ならではの景観と言えるでしょう。 辿りついた鷹ノ巣山で最後の展望を満喫した後、稲村尾根を辿って日原へと下山しました 全身が染まるかのような新緑に彩られた日原の集落はすで蒸し暑いくらいの水気に満ちていて、春も極まっているようでした。
早暁は紫に染まる。
雲取山頂。
七ツ石山から。
日影名栗山を振り返る。
三頭山が青緑色に染まる。
鷹ノ巣山頂。
逆光の稲村岩。