先日来客があった際に初めてシリアのワインを開けてみました。
ワイン名は「ドメーヌ・ド・バージュラス・ルージュ 2013」
その日はイタリアのオレンジワインから始めて、オーストラリアの赤(フランクランド・エステート・ロッキーガリー・カベルネズ2015)を飲み、もう一本ということで、ロッキーガリー・カベルネズのメルロ・カベルネ・フラン・マルベック・プティヴェルド・シラーズのブレンドに負けない重い赤としてこのワインを選んでみました。
実はこのワインは自ら購入したものではなく(ロッキーガリー・カベルネズもそうでしたが)、知人の青年に数年前にもらったもの。
その青年がJICAからヨルダンに派遣されて数年を過ごし、日本へ戻る際にお土産として買ってきてくれたという経緯があります。
そもそも中東エリアのワインに関しては全く予備知識もなく、特に関心があったということでもないのでネットで検索もせずにいました。
いずれにせよ貴重なものには変わりないので、何かの機会にと保存して置いいたのですが、意図せず抜栓することになりました。
飲んだ後で(!)検索してみると「シラー種を主体にカベルネ・ソービニヨン、メルローなどをブレンドした逸品」とあり、まさにロッキーガリー・カベルネズの後を受けるに相応しい内容と格を持ったワインでした。
シリアといえばいまだに内戦が続いている国です。
かつてテレビ報道でも、破壊され尽くした街並みや国外に逃れた難民の悲惨な生活が盛んに流されましたが、そんなところでワインが生産されているということに驚きを禁じ得ません。
「世界で最も危険なワイナリー」とされるドメーヌ・ド・バージュラスのワイン。
ネットでの検索にはこうあります。
「シリア唯一の商業ワイナリー『ドメーヌ・ド・バージュラス』のオーナーであるサーデ家は、今でも最高の品質を誇るワイン作りに情熱を注いでいます。
『ドメーヌ・ド・バージュラス』でのワイン作りは想像を絶するほど困難で、2011年からシリアへの入国が制限されているため、レバノンに住む彼らのブドウのチェックは、シリア側のスタッフがレバノン国境まで車でブドウを運んで行われます。」
現在も連日のように報道され続けているハマスとイスラエルの戦闘およびガザ地区の破壊と住民の犠牲。これらの悲惨な状況が繰り返される地にシリアもレバノンもヨルダンも隣接しています。
曲がりなりにも平和を享受し、ワインを食卓の喜びとして楽しむことができる日本に居ては想像もつかない現実が中東には存在するのでしょう。
そんな過酷な状況でも上質のワインを作り続けようとする人たちがいます。
今回意図せぬタイミングで飲むことのできた「ドメーヌ・ド・バージュラス・ルージュ 2013」。その作り手の熱意に相応しい素晴らしいワインでした。
(当日飲みきれなかったので、後日改めてティスティングし直して、簡単なコメントを作ってみました)
色:タールのように濃い、縁まで色素の詰まった少し褪色したガーネット。
香り:カシス、クローブ、葉巻の中にスターアニスの爽やかさが感じられる。
味わい:ドライプラムや干し葡萄のような黒い果実の濃厚さとタール的な焦げたニュアンス、凝縮感があり、しっかりしたタンニンを感じる。アフターはほどほどだが、まさにフルボディ。
味わいに革のニュアンスもあったので、ディスプレイしている登山靴の脇に並べて撮影。
この写真でも分かる通り光を通さないほど黒く濃厚なワイン。味わいもまた然りです。