昨日は鼻炎から逃れる意味もあり、しばらく歩いていなかった稲子湯から中山峠までを雪の状態を確認しながら歩いてきました。
朝方は冷えた霧に覆われていた山麓も、登り始めるに従って日差しが届くようになると、にわかに春の風景に変わります。
といってどこかに春を告げる花が咲いている訳ではないのですが、樹々の梢に光る陽の光や地面を覆う枯れた下草のあたたかみを帯びた色の中にそんな気配が満ちているのです。
コマドリ沢の辺りからは残雪も現れて、いかにも春山らしい風景もそれはそれで嬉しいのです。
緑池の氷もすでに一部では融けて水面が顔を出して、ここに天狗岳が映り込むのもそう遠くはないでしょう。
しらびそ小屋は相変わらずこじんまりと森の中に佇み、餌付けされた小鳥やリス達が盛んに餌をついばんでいます。
その風景の中にはひと一人いない、まさに絵に描いたような山岳紀行文に出てくる山の世界でした。
みどり池から中山峠まではまだかなりの量の残雪がありますが、このところの気温の上昇からか雪が完全に腐っていて、狭いトレースを少しでも外れると腿の半ばまで一気に踏み抜いてしまいます。気をつけて歩いていてもこんなことが頻繁に起こるので中々気の抜けない歩行が続きました。
今回の本当の目的は稲子岳の往復にあったのですが、分岐からはまったくトレースがなく、この深雪の踏み抜きを繰り返す勇気も根気も持ち合わせていない身にとっては諦めるのになんの躊躇もありませんでした。
傾斜を増す雪路に悪戦苦闘しながら何とかツボ足で中山峠へと登り詰め、黒百合ヒュッテでのんびりと珈琲ブレイクのひとときを過ごしました。
帰りがけに天狗岳の撮影中に出会った女性パーティー以外には誰一人出会わなかった、まさに陽春という言葉が相応しい長閑な一日でした。
稲子湯からの古いトロッコ軌道。登山道はその一部をトレースしていきます。
所々残置された軌道が露出しています。時にはレールを枕木に固定していた犬釘を拾うこともあります。
芽吹きを待つカラマツの梢。
途中からは残雪も現れます。
日を浴びるシラビソの樹皮にもあたたかい色を感じます。
コマドリ沢に架かる木橋。
しらびそ小屋の素朴な看板。
みどり池越しには天狗岳の東壁が望めます。
乾いた薪。これからもまだ盛んに使われるのでしょう。
途中の若いダケカンバの密集地から垣間見る稲子岳。
残雪が増えてきました。最近降ったばかりか、まだ真っ白です。
ここが入口でしたが。
踏み跡すらないので進入は潔く諦めます。
中山峠直下の急斜面。最後の急登はかなりきわどい感じでした。帰りにはロープを出して降りました。
斜面の途中からは諦めた稲子岳の山頂が望めます。雪はほぼ無いですね。
黒百合ヒュッテで珈琲ブレイク。他にお客が誰もいなかったので小屋番さんと暫し歓談。珈琲には花林糖が付きました。
天狗岳の雪も大分減りましたね。
帰途に通過したみどり池も解氷が進んでいます。