南岸に停滞する梅雨前線もここまではおとなしく、降雨予報も外れてばかりいるのは有り難い誤算。
昨日は思い立って久し振りに川俣渓谷を歩いてみた。
常々この渓のいい画像が欲しいと思っていたが、今回購入した一眼ボディのテストも兼ねて晴れ間を見計らって出かけてみる。
やはりこの渓はいい。自宅から車で5分もかからない距離にあるとは思えないほどの名渓だ。北杜市にある渓はどれも素晴らしいが、その深さと穏やかさ、樹種や野草の多様さの点でも、しっとりした独特の暗さを備えている点でもかなり特異な渓だと思う。かつては釣りで随分と通ったものだが、山に軸足を移してからはすっかり間遠くなってしまった。
駐車場にはそれなりの車が停まっていたけれど、吐竜の滝には野鳥撮影の青年が一人陣取っているのみ。盛んにキセキレイを狙っている。こちらものその脇で改めて盛夏のこの滝を画像に収めた。
普段ここから上流はぱったりと人の姿が途絶える。かろうじて鉄階段から岩壁を高巻くあたりで一人の釣り人と中年カップルにであったのみだ。目当ての淵は絶妙な光線に照らされ、雲間を出入りする日差しの戯れにかすかに明滅を繰り返す。渓の開口部を覆う樹々の梢から射す木漏れ日の岩に落ちる様はひと際美しい。
今回はいい画が撮れた。やはりペンタは緑が絶妙だと思う。
雲が増えて大分光が怪しくなってきたが、予定通り新しい獅子岩橋まで上がってみる。真新しい橋はこの自然な谷間には似つかわしくないが、安全という過剰な幻想にとらわれたハイカーには十分に安心を与えてくれるだろう。
そこからは途中で分断した渓谷道を離れ、清泉寮へ出てから東沢大橋を回って県営牧場の縁に沿った遊歩道をのんびり吐竜の滝まで戻る。暗さを増した曇り空のもと、駐車場には他に1台の車しか無かった。
駐車場から森に入るとすぐに小海線の鉄橋をくぐる。夜見ればまるで銀河鉄道のようだ。
名瀑の一つに数えられる「吐竜の滝(どりゅうのたき)」。野鳥撮影地としても人気がある。
岩肌についたシダにもどこか風情を感じるのはなぜだろう。
この渓独特の板状節理。20万年前の溶岩流の痕跡。
渓谷随一の景観。言葉を失う。
八ヶ岳では貴重なブナも多い。
その実。
何の変哲も無い流れもスローシャッターだと素敵な表情を見せる。
緑に覆われた杣道。
最近完成した吊り橋。果たして渓の規模にふさわしいのだろうか。
ようやく開花し始めたコアジサイ。花柄の紫がきれいだ。