峠の駐車場付近で出会ったツアーパーティー以外には誰とも出会わない午後だった。
防火帯の中央に付けられた山道は周囲に小さな花々をちりばめて、カラマツがようやく芽吹き始めた少し荒れた林の中を貫いている。それが終わると少し趣のある、落ち葉が散り敷いた森に変わって、やがて山頂の展望地に着いた。
視界は無い。岩場のあるもう一つのピークに回っても特に天候に変化の兆しも無いので、諦めて巻き道を戻ることにする。
林間を緩やかに下る踏み跡は、やけに苔のきれいな路でもあった。
防火帯を貫く登山道。まだ緑は薄い。
この植物だけはあちこちで旺盛に葉を広げている。
何故かとても存在感のある岩。巨人の指の化石のようだ。
地衣に覆われたカラマツの枝。幻想の世界の生物のようにも見える。
墨絵と彩色画の狭間。
一杯水のあたりは苔に覆われた岩がきれいだった。
山頂。視界は皆無だった。
幕岩にも登ってみたけれど。
霧の森に小さな明かりを灯すムシカリの花。
ハイゴケ。精妙な美しさ。
アケボノスミレも少し青ざめている。