もう「ミレミアム」はお読みになっただろうか。
スエーデンの作家スティーグ・ラーソンの小説で、それぞれ上下巻の三部作。
ミステリータッチの社会派小説といったジャンルの作品で、久々に「はまって」いる。
現在第二部の「火と戯れる女」を読破中。
映画も公開されるようで、こちらも楽しみにしたい。
感想はいずれまた。
とにかく本が手元に無いと落ち着かないので、定期的に書店に通い、何かしら物色しては読んでいるのだが、中々これ!といったものに巡り会わないのが悩みの種。
とはいえ睡眠薬替わりの乱読は当分収まりそうにない。
山を歩いていると本など読む暇は無いかというとそうでもなく、小屋に着いた後夕食までとか、就寝前まではそれなりの時間があるので、顧客とのコミュニケーションタイムが終われば結局何か読みたいということになってしまう。
小屋に置いてある古い山岳雑誌や図鑑、定番の「岳」や「孤高の人」といった漫画も悪くはないが、それらもあらかた読んでしまった後ではもっと今の嗜好にあった、完全に自分の世界に浸れるものを、ということになる。
宿泊山行の場合ガイドは24時間営業という暗黙の不文律はあるけれど、ちょっぴり孤独も噛み締めたいというささやかな願望もご理解願いたい。
単独のテント山行などの場合、そのとき読んでいる途中の文庫本など、これはもう必携となる。
夏のにぎやかなテン場ならいざ知らず、晩秋や冬の夜長にひとりぼっちのテン泊などは、とても何も無しではいられない。
最近は「ハヤカワ文庫」や「創元SF文庫」などを読むことが多い。
「ミレニアム」は前者から出ているが、後者から出ている本の中にも秀作は目白押しだ。
そんな中から一番に推薦できるのがマイクル・フリンの「異星人の郷」。
いわゆるSFのジャンルに収まらない多様な魅力に満ちている傑作といって差しつかえないと思う。
現在のフラデルフィアと14世紀のドイツの小村を舞台に、宇宙物理学や統計歴史学を軸として物語は交錯する。
一言でいえば中世ドイツの辺境の地での村民と地球外生命体との「未知との遭遇」の話し、ということになるが、当時の社会情勢や風俗、政治的・宗教的背景、思想や信仰、そしてペストの蔓延などの歴史的背景を描きながら、文明の度合いや姿形の異なる「知的生命体」がいかに理解し合い、また理解し合えないかというまさに人間的な課題がある種の謎解きを交えて語られている。
物語りの中心人物となる村の教会の司祭ディートリッヒと「異星人」であるクレンク人、ヨハンやゴットフリートとの奇妙な友愛。やがて訪れる悲劇的な結末。そして最後に残るほの明るく清澄なそして少しだけ悲しい読後感。
とにかく是非読んで欲しい一冊。
「異星人の郷」マイクル・フリン著 創元SF文庫 上下巻 各¥940