10月20日、思い立って乗鞍岳へ。
この機会を逃すと暮れまでまとまった休みも取れないので、前後の探鳥も兼ねて出かけてきました。
国内の3000m峰は乗鞍と御嶽を除いて全て登頂済み。
この二峰だけはいつでも行ける気がして残していたわけです。
特にこの時期を選んだわけではないのですが、夏は暑すぎて行動の意欲も湧かず、また晩秋を迎え人も少なくなっただろうという憶測と、運が良ければ冬羽に換羽しつつあるライチョウに遭遇できるのでは?との淡い期待もあって重い腰を上げた次第。
結果的にはライチョウには出会えず、100-400mmを装着した一眼レフもただのお荷物になってしまいましたが、2019年の槍ヶ岳以来の3000m峰登頂(初見参でした)に久しぶりに高峰の息吹を感じられた貴重な休日となりました。
ある意味観光地的な3000m峰ではありますが、やはり高山の雰囲気と周囲の山岳景観、山岳展望は素晴らしい高揚感を与えてくれます。
来シーズンはエコーラインのバス開通直後に機会を見つけて再訪してみようと思っています。

初日は安曇野で探鳥。午後から食品など買い物して夕方に乗鞍高原に移動。登山装備の再チェックを済ませ、「湯けむり館」で入浴後「三本滝」の駐車場に移動。この日は車中泊です。
暗くなって到着しましたが、幸い4台ほど先着組もいてなんとなく安心して就寝しました。
写真に写っているレストハウスは期間外の休業なのか既に廃業したのか分かりませんでしたが、入り口付近に自販機が設置されていました。
左手奥には終夜照明が点灯する水洗トイレがあり、夜中でも安心して利用できました。
夜半には雨、朝には止みましたが、稜線付近は濃いガスに覆われ、天気予報も昨夜のものから多少快方に向かったとはいえ、先が思いやられます。
朝になると車中泊組も増えていて、早朝到着の車もそれなりにやってきます。
隣のレガシーの青年とは山頂付近でも会ってしばらく歓談しました。

7:15のバスに乗車。なぜか三本滝駐車場からは件の青年と筆者のみ。他の方は次便の予約だったんでしょうか。それなりに乗客も多く、2台運行です。
今年からはエコーラインのバスも完全予約制となり、事前にネットから予約して、クレジット決済が必要でした。乗車したのは2台目のバスでしたが、こちらは十分な空きがあり、ゆったり座れました。それにしても延々と続くカーブの連続で、よくもこんな道路を作ったかと驚くばかりです。

濃霧の中、バスターミナルに到着。気温も低く、予報通り風も強く吹いていてほとんどの登山者は屋内に避難、天候の回復待ちのようでした。

バスターミナルにある施設はとても大きく、ベンチの完備した待機スペースも十分な広さがあります。
まずはここで雨具を着用し、臨戦体制を整えます。ほとんどの登山者がこの天候に躊躇するのか室内待機する中、勇んで出発しました。

最初に戸惑ったのは登山口。ターミナル駐車場からどちらへ向かえばいいのか、明確な標識がありません。視界があれば方向も定めやすいのでしょうが、この濃霧では施設前にあった略図とGPSに頼るしかありません。それらしい遊歩道を見つけて先に進みました。
ここでこの日最初の野鳥のイワヒバリと遭遇。残念ながらカメラをホルダーから外す合間に飛ばれてしまいました。

裏側から見たバスターミナル施設。雲間から青空も覗き始めました。
ここは以前施設内にツキノワグマが侵入してちょっとした騒動になったと記憶しています。
今年は各地で出没、事故に発展するケースも多いので、出会わないことを祈ります。

右方向のお花畑との分岐にあるライチョウの説明碑。
こうして写真に残しましたが、ご利益はありませんでした。

遊歩道を登り切るとこんな林道状の道になります。
再びガスが濃くなり、前を行く人のシルエットも朧です。

富士見岳分岐から肩の小屋までは緩い下り。右手が摩利支天岳の斜面、左手が春スキーのメッカ、大雪渓になります。この時点では残雪は皆無でした。

肩の小屋に到着。この少し上に立派な施設が立っていたので、そこが新しい肩の小屋かと錯覚しましたが、誤りでした。今期は営業を終了していたようです。

肩の小屋からは本格的な登山道になります。正直岩がちで歩きにくい。これだけ登山者が訪れるならもう少し整備してもいいんじゃないかと思いますが。
山頂付近は晴れたりガスったり。霧の合間から先行者も見えました。

徐々に高度を上げると下方に雲海が見えてきました。

行動して少し暑くなったので、休憩がてらウェアの調整。相変わらずガスが掛かったり、晴れたりの繰り返し。下方を撮ろうとするとガスが流れるといういやらしい天候でした。

晴れ間の広がった瞬間に撮影した大雪渓方面。蛇行するエコーラインがはっきりと分かります。

朝日岳付近まで来ると反対方向に権現池が見えてきました。ここも巨大な噴火口だったんでしょうね。

ガスが晴れた越し方を遠望。

蚕玉岳まで来ると剣ヶ峰も間近です。
前方のスカイラインのシルエットは休憩中に追い越されたパーティー。小学生くらいの女の子が外国人のお父さんと日本人の青年と悠々と登っていました。
この辺りは強風。事前の天気予報では風速16mと表示されていましたが、15m前後は吹いていたでしょうね。

剣ヶ峰直下にある「頂上小屋」。売店と休憩のみのようです。
下部で先行者と見えたのはこの小屋の従業員だったようです。ヘルメットを被った青年二人は山頂でも出会ったので、登山道整備の作業に来ていたのかもしれませんね。

最後の登り。いつになく足が重い...。それに加え相変わらずの強風...。

山頂着。歩き出してから1時間45分。6月以来の高山域なので息が上がりました。

雲海の上には白根三山を確認。左側の北岳の後ろには観音岳(?)。さらに左の稜線は一つ手前の仙丈ヶ岳のようです。

白峰三山の右には赤石岳と聖岳。中央が赤石、雲を挟んだ左が荒川三山ですね。

古色蒼然、今にも折れそうな山頂標識。

奥の院の大日岳。彼方には未踏の御嶽が。大日岳までの稜線は通行禁止になっています。

登ってきた方面。手前のピークが蚕玉岳、奥が朝日岳です。

表参道を上がると最初に潜る木製の鳥居。帰りは反対側から降りてみました。

頂上小屋も営業を始めていました。

今回のセルフポートレート。頂上でも撮っていただきましたが、劣化が激しく、このぐらいがちょうどいいですね。

肩の小屋上にあった謎の施設。東大の宇宙線研究所乗鞍観測所だそうです。
どおりで立派。

今回100-400mmで撮影した唯一の動植物。タカネナナカマドでしょうか。雷鳥の代わりとします...。

不消ヶ池が見える場所まで降りてきました。この先で富士見岳へと別れます。奥はバスターミナルの西にある恵比寿岳。不消ヶ池の左に見える稜線は不動岳のもの。乗鞍岳はこの狭いエリアに大小複数のピークが林立していて驚きました。(追記:23峰あるそうです)

富士見岳山頂からの剣ヶ峰方面。富士山は見えなかった、というより強風のために探す気も起こらず。
実はここへ来る直前振り返ると下方に何かの鳥が飛ぶのが見えました。近くの登山者が盛んに撮影しているように見えたので急いで登山道を駆け降り、現場付近に戻りましたが、影も見えません。撮影していた登山者もすでに歩き去って、情報収集も叶わず。しばらく待機しても現れないので仕方なく山頂へ戻る途中左斜面からホシガラスが飛び立ち、さらに下方へ飛び去っていきました。これが先ほど遠望した鳥なのか、雷鳥のようなずんぐりした体型だった気もしましたが、真相は闇の中です。

バスターミナル方面の展望。右側に見える鶴ヶ池の上にはかつてマイカーの駐車場だったらしきスペースが見えます。中央の登山道が見える小ピークが魔王岳。今回は登りませんでしたが、乗鞍岳山群では最短コースとのこと。

山頂からは手前の大黒岳越しに槍穂高の連嶺が展望できました。やはり圧倒的な存在感ですね。

一旦エコーラインと交差する鞍部まで降りて大黒岳に登り返します。

山頂にある休憩所。ここから引き返す人が多い中、雷鳥を求めてハイマツの多い稜線を先へ辿ってみました。

この辺り一面ハイマツの絨毯ですが、ライチョウは現れず。天候が良すぎて天敵から隠れていたのかもしれませんが、ハイマツの実が全く見当たらなかったのも気に掛かりました。
今回驚いたことの一つがこの鋭角に聳えるピークの存在。地図で確認すると烏帽子岳というようですが、登山可能ならぜひ登ってみたい素敵なシルエットでした。

帰りのバスの時間まで1時間ほどのタイミングでバスターミナルに戻りました。晴れているとこんな景色です。

駐車場内の無料トイレ。他にももう一箇所。ターミナル施設内にも有料トイレがあるようですが、ここはすでに期間外閉鎖されていました。
最後に今回の主目的ライチョウについてですが、実は登山途中ですれ違った青年(三本滝駐車場で隣に停めたレガシーのオーナー。バスターミナル到着と同時に歩き始めたようです)からスタートしてから間もなく遭遇したとの情報を得ていました。その時間帯でしたらガスが濃い天候だったのでライチョウも安心して出てきたのかもしれません。冬羽に換羽途中だったようでかなり白かったと言ってました。
その後他の登山者何人かに聞いてみたのですが、目撃例はなく、この日は出は悪かったに違いありませんが、どうやら運は味方しなかったようです。
帰ってからサイトで検索すると乗鞍岳のライチョウ目撃数は5月下旬から6月上旬、7月前半、8月下旬が一番多いようですね。
エコーラインのバスが運行されるのが7月からなので5月下旬から6月上旬は徒歩でしか行けませんが、7月に入ってからどこかのタイミングで再訪するのがベストなようです。
あるいは少し費用は嵩みますが、やはり室堂に行くのが確実かもしれませんね。
