先週の日曜日(13日)、今年初めて赤岳山頂を踏む。
何とか雪のある時期に登っておきたいと思いながら諸般の事情で叶わなかった東面ルート。
早朝から真教寺尾根を登り出した。
牛首山まではほとんど雪も無く、快調のはずだがいやに身体が重い。
冬の間のトレーニング不足と不摂生がこんなところに顔を出す。
扇山辺りから急に積雪量が増す。
木の間越しに大天狗の岩峰と赤岳山頂の三つのピークがくっきりと紺青の空を限る。天候が申し分無いだけ、引き返す理由も見当たらず、写真など撮っていたずらに時を稼いだりする。
やがて傾斜が増した稜線上の小平地でアイゼン装着。
樹林が途切れたこの辺りからは雪稜が両サイドに落ち込み、一度スリップしたら数百メートルもノンストップで滑落してしまう。暫くは緊張の連続だ。
やがて今まで登ってきた稜線が正面岩壁に吸収されると、短いミックスとなって岩に乗ったアイゼンの爪がきしんだ嫌な音を立て始める。
短い雪のトラバース前でアイゼンを脱ぐと主稜線との合流は近い。
突然左の天狗尾根上に人影が見えた。
既に大天狗は越えて、最後のツメの稜上をゆっくりした足取りで辿っている。向こうも大変だっただろうと思う。
雪は締まっていたんだろうか。
でも心配ない。多分こちらよりはるかに上級者だ。
少々バテ気味で山頂に着くと数人の登山者が丁度下山に掛かるところだった。
相変わらず360∘の眺望。
南北アルプス、富士は言うに及ばず、妙高、雨飾、上越国境方面の連稜までがくっきり見渡せる。
後から登ってきた青年と短い会話を交わして、早々に下山に掛かった。
北峰でハーネスを身につけていると頂上山荘の小屋番さんが出てきたので県界尾根の状況を聞く。
このところほとんど利用されていないのは真教寺と同様のようだ。
小屋の方もしばらく様子を見に行っていないと聞く。
明瞭なトレースは無い。
県界尾根の上部はこの時期雪稜というよりも幅の広い雪渓となっているので、延々とトラバース気味の下降が続く。
体側にピッケルを深々と効かせて確実に歩を刻んでゆくが、夏路は雪の下に深々と埋まっているので、トレースが無い場合はルート判断が難しいのがこの尾根の嫌なところだ。
最も険悪な箇所として想定してきた鎖場のルンゼも完全に埋まっていて、用意してきたロープも全く役に立たない。
緊張もあって、山側に置いた右足がつりそうになる。
それでも途中何度かコース修正して尾根上の鎖場のある岩場に辿り着くことが出来た。
なだらかな雪稜でしばし休憩し、今日辿ってきたルートを改めて振り返ってみる。
いつもながらの快い疲労感と安堵、そしてささやかな自信を感ずるひととき。
残り少なくなった行動食もひときわ胃にしみる。
県界尾根はここからが長い。
不要な装備をザックにしまい、日の傾く午後の数時間を残りの長い稜線歩きに費やするため久し振りの残雪の赤岳を後にした。
下界には朝の光が差し込んでいた。
牛首山からの権現岳。
扇山付近。まだ雪は深い。
樹林の頭越しの赤岳。
同様に大天狗の岩峰。黒さを感じるほどの濃い青空。
森林限界辺りから赤岳を望む。
稜線上から下山に使う県界尾根方面を見る。
頼みの綱。
主稜線からの権現と南アルプス。
阿弥陀と穂高方面。
山頂にて。
西面は雪も少なく見える。やはり5月だ。
下降はこんな斜度のトラバースをこなす。
安全地帯で一休み。やれやれ。
厳冬期と違いこんな軽装で行動できた。(この画像だけ携帯で撮影)
小天狗付近。長い尾根歩きだった。