9月20日は所属するガイドクラブの公募ツアーの下見。初めて富士山のお中道を歩きました。
かつては信仰登山の一環として五合目付近を全周できたそうですが、現在は吉田口五合目から大沢崩れまでの区間しかコースとして設定されておらず、且つ最近の出水により「滑沢」以遠が大きく崩壊して、公には通行ができない状況です。あとはオウンリスクということか、通行者は絶えないようで崩壊地にもしっかり巻き道ができていました。今回は残念ながら「仏岩流し」の手前で時間切れとなりましたが、大沢崩れ手前までは赤テープなどでルートが確保されているようです。
大勢の外国人観光客がひしめく五合目駐車場から一歩ハイキングコースに入ると、そこは静寂の林間トレイル。林床には苔が密生し、シャクナゲが異様な程に花殻をつけていました。ミヤマハンノキやコメツガが多い林を抜けると突然砂礫地が現れ、左手には山頂まで続く赤茶けた玄武岩の溶岩礫斜面が広がります。ここからの山頂方面の展望は仰角と傾斜角が近いのであまり高さを感じさせない不思議な印象です。
山頂まで続く赤紫色の溶岩礫は踏み込むとざらざらと崩れ、とてもこの斜面を登れるとは思われない不安定さです。それでも色付き始めたオンタデの黄葉が蛍光色の輝きを帯びて斜面を点繍する様はとてもきれいでした。また陽当たりのいい灌木の斜面には他では見られない程コケモモが密集し、ルビー色の果実をたわわに実らせていました。これだけの量があればかなりの数の野生動物を養ってくれることでしょうね。
御庭へと続く遊歩道を分岐するとシラビソの多い樹林帯に入ります。同高度にこれ程の密生した原生林があることが信じられない程の深い森です。同行した先輩達とまるで北八ヶ岳の森にいるようだと感心し合いました。この森はキノコの名所としても有名なようで、何人かの茸採りにも出会いました。素知らぬ振りで話しを聞くと今年は出が随分少ないとのこと、それにしても先輩のキノコ名人が素人然として話しに聞き入る様はちょっとした漫才にも似て中々の見物です。
滑沢と仏岩流しの崩壊地はそのえぐれの規模が予想以上に大きく、確かに危険を感じる程。みだりに立ち入らない方が賢明かもしれません。これが最近発生したものだとしたら、温暖化による積雪の急激な溶解かゲリラ豪雨などの影響があるかもしれません。これまで大沢崩れ以外には大きな障害がなかったであろうお中道巡りも、ここへ来て大きな転換点に遭遇しているということでしょうか。
今回のこのコース、思った以上に距離もあり、転落や落石のリスクもゼロではありませんが、その植生の多様さや次々と変わる風景展開のバリエーション、そして何よりも周囲の山岳展望の素晴らしさが際立つ中々魅力あるコースでした。季節を選んで御庭付近までのハイキングだけでも十分に満足できる推奨コースです。
山頂を前に佇む両先輩。
花殻が目立ったハクサンシャクナゲ。
カラマツも異様な程大きな実を付けていました。
それを観察するK先輩。
林床を埋め尽くすコケモモの群落。
この実の付き方は他では中々見られません。
色付き始めたオンタデ。
所々にある雪崩跡。その威力の大きさを物語っていました。
甲府盆地越しには周辺山岳の大パノラマ。
ここは北八ッか?といった風景。
風で落ちたオオシラビソの実。
キノコ名人が地元キノコ採りと談笑中。
ショウゲンジをゲット。
滑沢の風景。オンタデの草紅葉がきれいでした。
崩壊地の危ういトラバース。
道なき道を行きます。
今回の最終到達点の仏岩流し。