上信国境の外輪山を歩いてみた。
上部に若干の岩稜がある草付きを登ると、間もなく稜線に出る。
北には信越方面の連稜が伸びて、その裾野を広大な畑が埋めている。
反対に南面は鋭く切れ落ち、本峰との間の圏谷を思わせる高原状の底部に繋がっている。
暫くは断裂した尾根をゆっくりと辿ることにしよう。
時折北方からの雲が視界を限って、冷気が心地よく体表を撫でてゆく。
振り返れば東方の空には彩雲がなびいている。吉兆だろうか。
遥かに榛名の山々
それにしてもここからの展望は思っていた以上に見事だ。
優美に裾を引く本峰火山と険しい様相を見せる外輪山との対比。
カルデラ底部の礫地から湿原、山裾の針葉樹林へと連なる林相と異なる緑のグラデーション。
中部山岳広しといえどもこれほど多様な景観を内包する山域も少ないだろう。
しかもここからは人気のアウトレットを抱える避暑地も遥かに見渡すことも出来る。
不思議な場所だ…。
外輪山を四分の一周するとカルデラの底へと降りる周遊路に合する。
日陰となった路傍には意外に多くの花が一斉に残照の映える夏空を見上げて咲き競っていた。
火口と浮き雲。
外輪山の稜線を振り返る。
ミニアラスカ。
季節外れの綿雪が山影ににじむ。
オダマキの精妙な造形。
ブルーベル。谷間の風鈴。
こちらはまさしく「谷間の百合」。バルザック。一日にコーヒー60杯飲んだ人。