今日は北八ヶ岳の唐松峠に行ってきました。
峠とはいっても特にそれらしい場所というわけではなく、双子山と大岳の鞍部にある緩やかな平坦地です。
別にここが峠だと示す標識もありませんし、地図にも載っていません。
かつては双子池の東麓にある鷽の口という集落からの山道が池の手前でこの平坦地を乗り越していて、あえて峠と名付ければそれらしくも見えたのでしょうが、その山道も今では地畔にある双子池ヒュッテに通ずる林道に取って代わっています。
山口耀久さんの「北八ッ彷徨」には戦後間もなくの北八ヶ岳を題材にした登山日誌や随筆が多く納められていて、当時まだ未開拓のこのエリアの魅力を広く紹介した名著です。
中でも「唐松峠」と題されたこの紀行文は、秋から冬へと移りゆく山の季節のワンシーンを諧謔を交え且つドラマティックに表現していて、とても好きな文章です。
生憎すでに多くの唐松の葉は落葉してしまった後で、紀行にあるように落ち葉がいっせいに風雪に舞い飛ぶ場面には立ち会えませんでしたが、一人このあこがれの場所に立って静かに晩秋の午後に思いを馳せることが出来たひとときでした。
峠への路。
苔にも晩秋の日差しは届きます。
林道は唐松の落ち葉で埋まっていました。
小屋も閉じられ、雄池も静まり返っていました。
帰途、蓼科の「池野」に立寄り、そばがきを食べてから帰りました。