上高地ハイウェイって知ってる?
と聞かれればそんなものあったかいな?と思う人がほとんどだろう。
何せ上高地はマイカー規制が敷かれていて、あの狭い路をタクシーやバスがようやく乗り入れているぐらいだから、あの山岳地帯によもやハイウェイは無いだろう、というのが大方の感想なはずだ。
とはいえ何が起こるか分からないのがこの世の中。八ツ場ダム然り、国交省がかつて密かに進めていた幽霊計画がどさくさ紛れに復活!なんてことも現実に起こりえるところが怖いのだが…。
ということでまさか環境省のお膝元、虎の子のサンクチュアリ上高地に実際の高速道路は当分(!)建設はされないだろうと思うが、ある意味でのハイウェイは確かに存在するのだ。
ちなみに「上高地ハイウェイ」の命名者は筆者ですので悪しからず。
昨日、徳本峠から霞沢岳を往復して後はのんびり写真など撮りながら峠道を下って白沢出会いに着いた。ここまでは本来ならあまり人に出会うことの少ない路だが、さすがに好天が続く8月、思いのほか登山者とすれ違うことが多い日だった。
ここでのんびり梓川対岸に聳える明神岳でも撮ろうと横尾までのアプローチ道に出ると、来るは来るはですごい人である。時間帯からか下山者が圧倒的に多い。
とにかく老若男女幅広い世代が一様にカラフルな登山ウエアに身を包み目の前を闊歩してゆく。
特に若い女性が多いのが目につく。この辺が我がホームグラウンド南アと全然違うね。ちょっぴりうらやましいな。
仕方が無いのでその群れに混じって歩き出すが、とにかく速い、歩くのが。
それも年齢に関係なく、老いも若きも猛スピードで歩いている。
ツアーらしき一団も負けじと先を急ぐ風だ。
確かに横尾までは車も通る幅広の歩き易い路ではあるが、何も競歩大会の会場じゃないんだから、もう少しゆっくり歩けば!と言いたくなるくらいだ。
山ではみんなそれなりに苦しい登降を強いられ、それほど余裕も無かったはずなのに、この現象は一体何なのだ、と一瞬悩んでしまう。
察するに槍や穂高では結構きていた(!)人たちも、横尾や徳沢辺りまでくると飲み物でもおいしい食事でも豊富にありつけ、ゆっくり休んだ後は平坦な車道歩きということで急に蘇ってしまうらしい。
そうなれば後は身につけた最新ウェアに恥じない精悍な歩きを見せつけなければささやかな自尊心が満たされない、ということなのだろう。
浅ましいな。
と勝手な憶測で一人憤慨しつつ、未だ悟りのこない身の上にはなぜかむらむらと対抗意識が芽生えてしまった。
こんなチャラチャラした素人に負けてたまるか、ということで図らずもまったく大人気ないプロ根性が頭をもたげ、目標としたのが百人抜き。
まずは目の前の殺気立った一団を横目で易々抜き去り、ちょっと天狗になっているであろう、多分いるんじゃないかな、いやきっといるはずのショートパンツアンドサポートタイツのヤングカップル多数を餌食に。頑張ってる中高年ツアーズにはコンパスの違いを見せつける、といった戦法で次々敵を撃破してゆく。
時には抜いた直後にきゃあきゃあいいながら後ろを追いかけてくる強者ガールズなどいて内心冷や汗。
何とか河童橋までに百人は抜いただろうと安堵するけれど、全く浅ましさの極みである。反省。
とはいえ20kgを背負って呼吸も乱さず、涼しい顔で横をすり抜けてゆくのは中々技術と体力が必要とされるのですぞ!
おかげで翌日は久々に大腿筋の筋肉痛がひどい。
おまけに何の祟りか知らないけれど、ザックのショルダーストラップのサイズ調整システムまでが壊れていた。
ということでこれが「上高地ハイウェイ」の顛末。
つまらない自尊心は身を滅ぼします。どうぞご注意を!
白沢出会いからの明神岳。バックの青空がすごい!