二日目は朝5時にスタート。
まずは朝日岳へと登り返します。7月末になれば水平道が開く予定とのことでしたが、この時点ではまだ雪渓が不安定で通過が困難のようでした。早朝は雲もなく周辺の山岳がはっきりと見渡せます。途中からは剣岳も姿を現し、しばし十数年前の山行の思い出など語り合いました。昨日見られなかった山頂からの展望を満喫して、いよいよ雪倉岳を目指します。相変わらず花の多い下降路をひたすら下って水平道の分岐を過ぎると赤男山を巻くルートとなり、木道が設置された湿原を抜けて雪倉岳手前の鞍部に到着します。この日も朝から暑いので水分消費も半端なく、湿原途中にある雪渓から流れ出している少し怪しい流れで水を補給していよいよ雪倉の長い登りにチャレンジとなりました。湿原の細流にはミズバショウやリュウキンカ、ハクサンコザクラの群生が見事です。この後の雪倉東面の長い登りもシラネアオイの咲き残りを始めコマクサを含めた新たな花が次々に現れて少しも飽きることはありませんでした。
途中からはザレが多く目立つ緩傾斜となって、ようやく雪倉の山頂部が視界に入りました。花の名を尋ねられた若い単独行の女性やガイドに引率された中高年グループなどとすれ違いながらようやく相変わらず快晴の雪倉山頂に到着。御影石の目立たない標識のみのすっきりとした山頂は遮るもののない大展望を保証してくれるのみならず、そのシンプルな佇まいはまさに山本来の姿を表すようで期待以上の好印象を持ちました。
ウルップソウが咲き残る下降路をこなすときれいに掃除された雪倉避難小屋、ここからは鉢ヶ岳の山腹に架かる雪渓の横断と三国境までの急な登りが待っています。雪渓も斜度がないので特に危険はないのですが、固く氷化した箇所もあるため念のためにその一部ではチェーンスパイクを使用しました。三国境手前の登りでは照りつける日差しが強烈で、暑さに耐え切れずにバンダナに雪渓の雪を包んで首に巻く始末。最後のガラ場をこなして三国境に着いた時には心底ほっとしました。
その日のうちに帰宅しなければならないので、白馬山頂は割愛して一路白馬大池を目指します。ここから小蓮華を経由して白馬大池までの稜線は中部山岳でも有数のたおやかで美しい縦走路。東からの雪渓越しの涼風に吹かれれば気分はまるで天上界を彷徨う旅人です。
白馬大池まで駈け下って、冷えたソフトドリンクの一気飲みで喉を潤してから最後の苦闘に臨みました。蓮華温泉までの3時間の単調な下りは照りつける西日と岩の多い路面とに苦しみながらただひたすら耐えるのみ。温泉の赤い屋根が見えた時には安堵感がこみ上げてきました。温泉に浸かって二日間の汗を流してからさらに4時間のドライブで帰宅したのは22時。花に溺れ、暑さに打ちのめされた長い二日間がようやく終わった瞬間でした。
朝日岳山頂からの白馬方面の大展望。
ハクサンチドリもいい感じです。
ミヤマキンポウゲでしょうか。群生して咲いていました。
テガタチドリも。
少し色の薄いシラネアオイ。
小桜ヶ原辺りの木道から。
ツバメ岩付近のタカネバラ。
最後に現れたシラネアオイ。今まさに開き始めといったところ。ひときわ色が濃い株でした。
雪倉岳への登りでは斜面全体にミヤマムラサキが群生。ここではムシトリスミレと混生していました。
山頂標識。ここにあるものは三角点とこの標識のみです。
山頂に立つT氏。無理してでもポーズだけは決めるとこが笑えます。
そして私。背景の山並みがきれいです。
白馬方面の展望。雪縞が美しい。
タカネスミレ。
ウルップソウも咲き残っていました。
チャボセキショウでしょうか。
雪倉避難小屋。とても清潔に管理されていました。予定しての宿泊は厳禁とのこと。
イワオウギ。シロウマオウギが多いと思っていましたが、とても少ないそうです。
コマクサも旬を迎えていました。
鉢ヶ岳の雪渓。三ヶ所ぐらいをトラバースします。
三国境から雪倉方面を振り返って。随分登ってきました。
雲湧く白馬岳。見えたのはこの瞬間だけ。
ライチョウの親子が砂浴びをしていました。
杓子方面が姿を現しました。
アオノツガザクラ。
雪倉方面にも雲が湧いて徐々にその姿を覆ってゆきました。
眼下に臨む白馬大池。ようやくここで冷たい飲み物にありつけました。