3月になりました。
この冬はこれまで暖冬傾向で降雪もほとんどなかったのですが、ここへ来て立て続けにしっかりと降ってくれています。
雪かきは大変ですが、おかげで風景撮影が充実するので、助かります。
まだ暖冬気味だった先月中旬、一度行ってみたいと思っていた愛知県の設楽町にある「オシドリの里」へ出掛けてきました。
「オシドリ」。撮影の難しい鳥の一つです。
八ヶ岳山麓にも生息し、冬になると近くのダム湖に大きな群れが集結するのですが、とても警戒心が強く、数百メートル離れた対岸からようやく視認できるほどの場所にいるので、望遠レンズでも点にしか写らないほどです。
時々バーダーのブログなどで初冬の移動途中のオシドリが山間部のため池などに飛来した姿をアップしていますが、そもそも場所を特定できる写真ではないので、これまで近距離の撮影のチャンスはありませんでした。
「オシドリの里」。昨年ネットで検索してその存在は知っていたのですが、少し移動距離がありそうな印象だったので敬遠していました。
最短で行こうとすると中部横断自動車道と新東名を乗り継いで、新城ICからは257号を北上しなければなりません。
最近高速道路の運転が億劫になってきたので、このコースは諦め、高遠から伊那、飯田と抜け、153号、257号利用で向かうこととしました。
思い立っての出発だったので、それほど早出というわけでもなかったのですが、現地着が14時過ぎ。飯田から先が長かった。
おまけに153号、飯田市を過ぎ、阿智村に入ると途端に寂しくなり、今どきこんな秘境があるのかと思うほどの山の中。木曽路なんてものじゃありません。
道中「道の駅」は3箇所ほどありましたが、コンビニは目的地の設楽町まで皆無。
南信州・奥三河恐るべしです。
何はともあれ「オシドリの里」へ。
この日は曇りで時々小雨がぱらつく天候。
晴天よりも撮影には適しているのですが、観察終了が16時なのであまり余裕はありません。
ここは地元有志の方々が管理しているようで、入場料金はカンパ制。
オシドリが見られた場合のみ目安の料金を支払うシステムです。
観察小屋は豊川沿いに単管パイプと木枠で小屋掛けし、ブルーシートで覆った簡素なもの。
正直景観的にはいかがなもの?との思いも湧きましたが、申し訳ないほどのカンパ料金なのでとても文句は言えません。見回りや給餌の労力を考えるとただただ頭が下がります。
手前の受付(屋外)で観察・撮影の注意を確認後観察小屋へ向かいます。
中は幅2m、奥行き10mほどのスペース。足元は地面で後方には簡素な木のベンチ、前方はブルーシートに20cm×30cm角ぐらいの観察窓が1m間隔ぐらいに開けられています。
中にはすでに5〜6人程のバーダーが三脚を据えて陣取っています。
奥の方が人気のようですが、ここは新参者。遠慮がちに空いていた一番左の窓から撮影することにしました。
受付で聞いていた通り目の前の河原にはすでに数十羽のオシドリが浮かんでいます。
ただしやはり右側(下流側)に多くいるようで、こちらの撮影範囲には比較的少ないのですが、それでも20m以内の範囲に泳ぐオシドリは500mm+1.4倍テレコンのレンズでは十分な距離。
まずは押さえにと、シャッターを切りまくりました。
やがて下流側の群れも徐々に上流側に移動を始め、みるみる目の前の水面を埋め尽くすほどに。
そればかりではなく、手前の岸に上がって、その付近に点在する岩の上にも登ってくれるサービス振り。
まあサービスかどうかは不明ですが、ここで背景抜けの全身像を撮影することができる幸運に恵まれました。
到着してまだ30分も経っていません。
その後何かに驚いたのか一斉に下流側に飛び去ってしまい、小雨も降り出して光量も怪しくなってきたのを潮にこの日の撮影は切り上げました。
もうこれだけでも十分満足ですが、せっかくここまで6時間近くかけて来たので、今夜は「道の駅したら」で車中泊して明日の午前もオシドリ三昧と決め込みます。
設楽町には日帰り温泉施設がないので(というより本当に小さな町なので)隣の東栄町にある「とうえい温泉・花まつりの湯」まで1時間をかけて往復。
ここは大きくて素晴らしい温泉ですが、行き帰りの道中が怖くなるほどの山あいの隘路。暗くなってからは走りたくない場所ですね。
「道の駅したら」はまだ新しく、設備もモダンでトイレスペースも明るく快適。そしてなんといっても隣にファミマが24時間営業しているという好立地。
八ヶ岳山麓に比べればだいぶ南にあるというだけでなく、そもそもこの時期にしては気温が高めだったので、寒さ知らずで就寝できました。
「道の駅したら」冬の車中泊におすすめです。
翌日も曇り。断続的に小雨も降り、昨日よりも条件は良くありません。
それでも開場時間8時の15分前には現地に着いて2番目に入場を待ちました。
驚くことに開場数分前には後ろに車の列。
開場するとみなさん一目散に場所取りに走ります。
先着順も何もなく、正直いい歳してあさましい限りですが、まあこれはどこへ行っても変わらぬ光景です。
結局11時近くまで粘りましたが、昨日よりもシャッターチャンスに乏しく、天候も回復しそうにもないので、今回も一斉に大移動したのを機に帰途につきました。
帰りはナビに頼らず、往路を戻るつもりが、途中で道を間違え、飯田ではなく恵那に出てしまい、中津川〜飯田区間を中央道利用するという失敗もありましたが(情けないのですが、認知力の衰えを感じます)、設楽町にある福田寺で武田信玄のものと言われる墓を見たり、武田勝頼が長篠の戦いで敗れたのち、敗走途中で立ち寄ったという田峯城を見学したりと歴史探訪も満喫して、無事夕方には帰宅できました。
余談ですが「道の駅したら」で売っている五平餅、これ最高です。1本¥350也。大きいので満足感も十分。因みに2本買ってお昼代わりに堪能いたしました。
設楽町に行ったらぜひご賞味ください。
※画像は全てノートリミング、RAW現像済み
使用機材:Canon EOS 7D Mark II + Canon EF500mm F4 IS USM(×1.4エクステンダー使用)
最初に近くに出てきたのはメス。目の周りのアイラインが可愛いですね。
オスも射程圏内へ。絵に描いたような構図になりました。
やがて手前の岩に登る個体が出てきました。
カモ類の中にも鮮やかな羽色を持った種類は多いのですが、これほど美しい体色をしたものは他には見当たりません。しばし見惚れてしまいました。それもこの距離で。
浅瀬に浮かびながらしきりに体を揺らす仕草を繰り返します。
どうやらメスへのディスプレイのようですね。まだペアにはなっていないようでしたが、いわゆる「オシドリ夫婦」の図になりました。
岩に上がるとカメラレンズとほぼ同じ高さになるので体の下面も観察できます。
とにかくゴージャス。
メスもよく見るととても美しい羽毛に覆われています。
ここでもペア的な構図に。首を伸ばすとどこかニワトリを彷彿とさせます。
これは二日目に撮影した群れの様子。ちょっとしたきっかけで対岸の岩の上に上がり固まってしまいます。近距離の写真もあるのですが、暗いのと構図が良くないので割愛しました。