今週末をもって中央西線からEF64が引退するらしい。
一歩も二歩も遅れて参入した「撮り鉄」予備軍としては寂しい限り。
そもそも鉄道を撮ろうと思い立ったのは2023年の2月に久しぶりの大雪となり、風景写真の一環として最寄りの小海線で雪景色の中を走るキハ110系ディーゼルでも押さえておこうと思ったのがきっかけだった。
その後もあくまで八ヶ岳山麓の風景の一部として小海線や中央線をテーマにタイミングが合えば撮る、といった程度だったが、ネットで撮影ポイントを探すうちに、いわゆる「撮り鉄」たちの情報に知らず知らずのうちに感化されていったということのようだ。
そもそも鉄道撮影というと列車と線路があればどこでも撮れるというふうに思われるかもしれないが、これがなかなか難しい。
ただ列車だけを撮ればいいというわけではなく、まず天候、その他背景やシュチュエーション、撮影アングル、ポジション、アクセス、駐車場の問題など、これらを総合的に満たす撮影ポイントや撮影条件というのはザラにあるわけではない。
それゆえに「撮り鉄」たちのマナーが問題になるわけだ。
筆者の撮影テーマはあくまで自然風景と野生生物。
なので鉄道写真に惹かれることはあっても「撮り鉄」を自認するほどの熱もなく、あくまで近場の風景撮影の合間にといった程度に留まっていた。
そこに微妙な変化が起こってきたきっかけが電気機関車。
2024年の2月、ネット情報を頼りに中央線の「特急あずさ」の撮影ポイントを物色していて、偶然EH200に遭遇した。
いわゆる旅客電車と違う無骨な存在感。
低速で延々と牽引する貨車やタンク。
そんなパワフルな姿に年甲斐もなく魅入られてしまったらしい。
その後件の電気機関車を検索するうちに、さらに古い型の電気機関車が気になり始めた。
それがEF64である。
検索によると、その時点で中央西線に未だ数本のEF64が走っているようで、過去のものも含め山深い木曽路を走るEF64の写真が数多く掲載されており、中には撮影ポイントまで詳しく紹介している投稿もあって、いつかは、と思っていた.。
ところが凡夫の悲しさで、まとまった休みが取れるとなると「撮り鳥」を優先してしまう。
結局翌年の3月に終了した中央西線の花「総括重連運転」を撮影する機会を逃し、最後に残った単機のコンテナ輸送を撮影するチャンスしか残っていないという結末になってしまった。
それも「まだいいか...」の繰り返しで、ようやく重い腰を上げたのが今年の2月。
3月半ばのダイヤ改正で消えゆく直前であったとは、何とも悔やみきれない。
それでもネットの記事だけでは不明だった撮影ポイントを探し出し、数十カットではあっても最後の姿を撮影できたのは僥倖というべきだろう。
今後EF64が残るのは伯備線のみだという。
憂に満ちた木曽谷を走る姿とは違っても、機会があれば一度会いに行きたいと思っている。

3月某日、ようやく探し当てた定番ポイントで上りの「特急しなの」を撮影。

S字のアウトカーブを行く「しなの」。先頭車両は貫通型。連結した際通路が確保できる仕様になっている。

同ポイントから下りの「しなの」を。先頭車両は非貫通パノラマ型グリーン車というらしい。

こちらも同じポイントでEH200に牽引されたペパーミントグリーンのタキ(ガソリン専用タンク車)の車列を。

2025年3月まではEF64が総括重連運転を行なっていた8872レ。

最後のEF64もこの時間帯に走ってくれれば良かったのだけれど。

こちらも有名な撮影ポイントで。待ちに待った目当ての81レのEF64が鉄橋を渡り始める。

実はこの場所は2月末に撮影場所探しで木曽を訪れた際、何とか探し当てた撮影ポイントの一つで、下り列車が手前の障害物なしで撮影できる絶好のポイント。

その際は天気が良すぎて通過時間帯では完全に逆光となって、現像で調整しても高コントラストの写真になってしまった。80%にトリミング。

今回は曇天を狙って行ったので、国鉄色の車体色もよく分かる木曽路らしい落ち着いた画になった。80%にトリミング。

この日このポインでEF64の通過を待つ「撮り鉄」の面々。後方の人数を足すと20人以上を数えた。すぐ前のおじいちゃん(お父さん?)と来ていた幼児が可愛い。

鉄橋を通過したEF64の次の駅での15分程の待機時間を利用して、撮影後すぐに第2ポイントへと移動する。「しなの」を撮影した場所の付近だが、少し高い位置から狙えるのでここも下見しておいたポイントだ。国道脇の駐車帯に車を置き、徒歩で向かうと既に車で移動した撮り鉄たちがお気に入りのポイントに陣取っていた。そもそもここは車道も狭く、地域住民の立てた注意看板があちこちにあるスポットで、これまでにもマナー違反の迷惑行為が頻発したと思われる場所だが、10数人と思われる撮影者はそんなことには馬耳東風であちこちの路肩に駐車していた。浅ましい限りである。
そんな憤慨が裏目に出たのか、せっかくのS時カーブを通過するEF64の撮影に失敗。事前に置きピンしていたにも関わらず、全てのカットが後ピンになってしまった。
これが慣れない機材の怖いところで、EVFの場合、被写体との距離があるとファインダーの像が滲んでしまって、正確にピントが来ているか判別できずに、微妙に設定がズレた際に気づかないということになってしまう。徒歩での移動時間を考慮し、三脚を車に置いて手持ちの8Fで撮ったたことが裏目に出てしまった。残念至極である。

そんな落胆を救ってくれたのが、ちょっとした奇跡。上記のポイントでの撮影後は家路を急ぐだけなのだが、19号線は比較的車の数が少なく、速度も出しやすいので移動がスムーズ。快調に飛ばして、意図せず帰路の途中にあるこちらも有名な撮影ポイントに差し掛かると、なんと数人のカメラマンが待機している。先のポイントからここまでは途中の停車時間を考えても本来間に合うはずはないと思っていたが、車の流れがことのほかスムーズだったせいで、間に合ったらしい。急いで少し先の既に数台が停めてある駐車帯に滑り込んだ。ここからカメラを引っ掴んで、何年ぶりかで線路脇の歩道を全力疾走。ちょうど撮影ポイントに滑り込む直前で前方からやってくるEF64を視認できた。

このポイントもやはり障害物がなく、緩やかなS時カーブで目の高さで撮れる一級撮影ポイント。カメラの設定を再調整する間もなく迫って来たEF64を行き当たりばったりで連写した。結果は少しアンダー気味だったが、うまくAF が効いてまずまずの写真が撮れたのは予期せぬ収穫だった。(できればもう少し左から狙いたかったけれど...)

普通ならここまでで十分満足すべきところ、なりふり構わない撮り鉄たちの感化からか、またしても無謀な計略が...。もしかしたらもう一つチェックしておいたポイントに間に合うかもしれない、との思いがよぎり、またしても全力疾走。どうやら同じ目的を持ったおじさんと急ぎ車に戻り、発進。こちらもかなりの距離のある次の撮影ポイントまで飛ばすことに。

その成果が上の一枚とこの画像。流石に夕暮れの時間帯とあって一人しか待機していなかった撮影ポイントに後続のおじさんと二人割り込んでなんとか撮影できた最後のEF64となった。欲を言えば木曽谷を俯瞰する高台から谷に沿って走る車列を引きで撮ったり、雪の舞う白銀の谷を背景に疾走する車列を狙ってみたかったが、それも全て後の祭り。この最後の夕闇の中を行くEF64の写真が短い出会いの記念碑となった。
